この記事の結論
- 介護施設の勤怠管理では、夜勤をまたぐシフトと1か月単位の変形労働時間制を正しく集計できるかが最重要です。
- 訪問介護など直行直帰が多い事業所は、スマホのGPS打刻に対応した製品を選びましょう。
- 有給休暇の年5日取得や残業時間の管理など、法令対応の機能もあわせて確認します。
介護施設の勤怠管理でよくある課題
- 日勤・遅番・夜勤など勤務パターンが多く、シフト作成に時間がかかる
- 夜勤が日をまたぐため、労働時間や深夜時間の集計が複雑になる
- 1か月単位の変形労働時間制を採用しており、残業時間の計算が難しい
- 訪問介護では直行直帰が多く、事業所で打刻できない
- 人手不足の中で、有給休暇の取得管理まで手が回らない
- 急な欠勤でシフトの組み替えが頻繁に起きる
1か月単位の変形労働時間制とは
1か月単位の変形労働時間制とは、1か月以内の期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間以内になるように、日ごとの労働時間を割り振る制度です。夜勤のように1日の労働時間が長い日がある介護施設で多く使われています。
この制度では、あらかじめシフト(勤務割表)で各日・各週の労働時間を決めておく必要があります。期間全体の労働時間の上限(総枠)は、次の式で計算します。
総枠=40時間×その月の暦日数÷7
| 月の暦日数 | 労働時間の総枠 |
|---|---|
| 31日 | 177.1時間 |
| 30日 | 171.4時間 |
| 29日 | 165.7時間 |
| 28日 | 160.0時間 |
時間外労働になるかどうかは、①1日、②1週間、③変形期間全体、の3段階で判断します。たとえば、シフトで8時間を超える時間を定めた日はその時間を超えた分、8時間以内と定めた日は8時間を超えた分が、1日単位の時間外労働になります。手計算では判断が複雑になりやすいため、制度に対応した勤怠管理システムで自動計算すると確実です。
計算例:夜勤のある1か月
例:30日の月に、夜勤(16時〜翌10時、休憩2時間で実働16時間)を8回、日勤(実働8時間)を5回入れた職員の場合
- 夜勤:16時間×8回=128時間
- 日勤:8時間×5回=40時間
- 合計:168時間(30日の月の総枠171.4時間以内)
月の合計は総枠以内ですが、各日・各週の労働時間がシフトで定めた時間を超えていないかも確認が必要です。また、夜勤のうち22時から翌5時までの時間は深夜労働として25%以上の割増賃金の対象になります。
※実際の計算は、就業規則や労使協定の内容に沿って行ってください。
介護施設向け勤怠管理システムの選び方
1. 夜勤を含むシフトを設定できるか
夜勤のように日をまたぐ勤務を1つの勤務として扱い、深夜時間(22時〜翌5時)を分けて集計できるかを確認します。交代勤務のパターンを複数登録できる製品が便利です。
2. 変形労働時間制に対応しているか
1か月単位の変形労働時間制で、総枠や日・週ごとの時間外労働を自動計算できるかを確認しましょう。
3. 直行直帰でも打刻できるか
訪問介護では、スマホのGPS打刻で打刻場所を記録できると、事業所に戻らずに正確な勤怠を残せます。訪問先の間の移動時間の扱いなども含めて、勤務ルールを整理しておきましょう。
4. 法令対応の機能があるか
残業時間の上限規制や、有給休暇の年5日取得義務に対応するため、アラートや有給休暇管理簿の機能があると安心です。
導入の手順
- 勤務パターンを洗い出す:日勤・早番・遅番・夜勤など、施設で使っている勤務の時間帯と休憩を一覧にします。
- 制度を確認する:変形労働時間制の対象期間や起算日、所定労働時間を就業規則で確認します。
- 勤務パターンを登録する:洗い出した勤務パターンを製品に登録し、夜勤が正しく1勤務として集計されるか試します。
- 1か月分のシフトで試算する:無料トライアル中に1か月分のシフトを入れ、総枠や時間外労働が想定どおりに計算されるか確認します。
- 打刻方法を決める:施設内は共有端末、訪問介護はスマホのGPS打刻など、職種ごとに決めます。
急な欠勤が出たときのシフト変更の流れ
介護施設では、急な欠勤でシフトを組み替える場面が多くあります。勤怠管理システムを使った場合の流れの例です。
- 欠勤の連絡を受ける:職員が欠勤の申請をするか、管理者が欠勤を登録します。
- 代わりの職員を探す:シフト表で、その日に勤務していない職員や、勤務時間を延ばせる職員を確認します。
- シフトを変更する:代わりの職員のシフトを登録し、変更後のシフトを職員に共有します。
- 労働時間を確認する:変更によって、その職員の週や月の労働時間が変形労働時間制の範囲を超えないかを確認します。
- 記録を残す:変更の理由と承認者を記録しておくと、後から勤務の経緯を確認できます。
1か月単位の変形労働時間制では、あらかじめ決めたシフトを使用者の都合で自由に変更できるわけではない点にも注意が必要です。シフト変更の扱いは就業規則で確認しておきましょう。
介護施設で検討しやすい勤怠管理システム
以下は、介護施設で重視されやすい「シフト」「変形労働時間制」「スマホ打刻」への対応を、各社の公式サイトで確認できた製品です(情報確認日:2026年10月16日)。
| 製品名 | 料金(公式の表記) | シフト | 変形労働時間制 | スマホ/GPS | 有給管理 |
|---|---|---|---|---|---|
| Touch On Time | 1人あたり月額300円(税別) | ○(3交代など) | ○ | ○ | ○ |
| KING OF TIME | 1人あたり月額300円 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ジョブカン勤怠管理 | 1ユーザー月額200〜500円(税抜) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ジンジャー勤怠 | 製品ごとに月額300円〜(税別) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| マネーフォワード クラウド勤怠 | 基本料金制(月6,480円〜・税抜) | ○ | ○(1か月単位) | ○ | ○ |
Touch On Time

3交代勤務など複数のスケジュールパターンを設定でき、変形労働時間制にも対応しています。指静脈やICカードなど本人確認つきの打刻と、スマホ打刻を併用できます。
KING OF TIME

フレックス・変形労働制、スケジュール・シフト管理、有休管理に対応しています。ICカードや顔認証(iPad)、スマホ(位置情報)など打刻方法も豊富です。
マネーフォワード クラウド勤怠
従業員50名以下の事業所向けで、1か月単位の変形労働時間制、残業時間の色別アラート、有給休暇の自動付与に対応しています。
製品ごとの機能は勤怠管理システムの比較表で、「変形労働時間制」「シフト作成」などの条件で絞り込めます。
導入前のチェックリスト
- 夜勤を1つの勤務として登録し、深夜時間を分けて集計できるか
- 1か月単位の変形労働時間制の総枠と時間外労働を自動計算できるか
- 訪問介護の職員がスマホから打刻できるか
- 急な欠勤によるシフトの組み替えを簡単にできるか
- 有給休暇の年5日の取得状況を確認できるか
